2000万円老後不足の件~今ではなく2040年にはいくら不足か?
少し前だが2000万円不足の件がNewsとなっている、発端は下記。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
計算ロジックは単純で
月間不足額5万円×12か月×30年=約2000万円
というもの。
これが妥当かどうかが議論されているが、そもそも2040年頃という高齢化がピークの時期を考えるとこの不足額がどの程度増えるのか、のほうがより大きい問題と考える。
よってざっと簡単に試算してみる。
月額5万円不足の収支の概要は下記。
実収入 21 万円
勤め先、事業、その他収入: 2 万円
社会保険料: 19 万円
実支出 26万円
食料: 6.4 万円
住居: 1.4 万円
水道光熱: 1.9 万円
株、家事、服: 1.6 万円
保険、医療: 1.6 万円
交通・通信: 2.8 万円
教養娯楽: 2.5 万円
その他の消費: 5.4 万円
非消費支出:2.8万円
差額が5万円
これについて20年後の前提を下記とする。
■ 年金給付削減・医療負担増案
1. 18-64歳で65歳以上を支える比率が2017年2.1人:1人が
2040年に1.5人:1人となる。現役一人当たり0.19人増加。
医療、年金について現役一人当たりの負担は維持して65歳以上の負担を増す。
年金額は29%減とする((1-0.29)/1.5は1/2.1とほぼ同じ。
医療はざっくり現在2割負担。これが43%負担(40%負担として2倍負担とする)となる。
(1-40%)/1.5は(1-20%)/2.1とほぼ同じ
2. 現在約50兆円の厚生、年金の収入のうち国庫からは10兆円(2割)。
これについては10兆円維持(年金給付削減・医療負担増案1)、
一般会計の収支均衡のために10兆円国庫負担なし(年金給付削減・医療負担増案2)
の2案。
3. 年金積立金は現在取り崩していない(運用収入などで充当)ので考慮しない。
4. 医療への国庫負担はひとまず検討外。
■ 消費税増税対応案
上記とは別に、消費税で年金、医療費を賄うケースを想定(消費税増税対応案)。
年金50兆円、65歳以上医療費25兆円。実は高齢者数はさほど増えないが、現役層が減少。
簡便のために
「65歳以上を支える比率が2017年2.1人:1人が2040年に1.5人:1人となる。」との想定で高齢者が増加しそれに比例して年金、医療費が増えるとする。40%増となり75兆円(50+25)が105兆円。30兆円増。消費税1%で2.5兆円増収として、12%増(8%が20%へ)
計算結果は下記。
原案 | 年金給付削減・医療負担増案1 | 年金給付削減・医療負担増案2 | 消費税増税対応案 | ||
実収入 | 21 | 万円 | 15.5 | 12.8 | 21.0 |
勤め先、事業、その他収入: | 2 | 万円 | 2.0 | 2.0 | 2.0 |
社会保険料: | 19 | 万円 | 13.5 | 10.8 | 19.0 |
実支出 | 26 | 万円 | 27.6 | 27.6 | 28.9 |
食料: | 6.4 | 万円 | 6.4 | 6.4 | 7.1 |
住居: | 1.4 | 万円 | 1.4 | 1.4 | 1.6 |
水道光熱: | 1.9 | 万円 | 1.9 | 1.9 | 2.1 |
株、家事、服: | 1.6 | 万円 | 1.6 | 1.6 | 1.8 |
保険、医療: | 1.6 | 万円 | 3.2 | 3.2 | 1.8 |
交通・通信: | 2.8 | 万円 | 2.8 | 2.8 | 3.1 |
教養娯楽: | 2.5 | 万円 | 2.5 | 2.5 | 2.8 |
その他の消費: | 7.8 | 万円 | 7.8 | 7.8 | 8.7 |
差額 | -5.0 | -12.1 | -14.8 | -7.9 |
考察
1. 正直これ以上現役負担となると少子化が深刻になるのではと思う。
現役の負担の絶対額を維持しながら老人世帯への給付を削減すると、年金減少、医療費負担増でマイナス5万円がさらに7~10万円/月の不足額が増える(不足額はトータルで12~15万円)となる。
2. 不足額は消費税Upの方が高齢者としては負担増が減る。
ドイツでは消費税が20%程度であるが、大学が無料であったり
現役層の負担軽減もある。大学費用等が自己負担のまま
消費税20%となると厳しいのでは?
現在でさえ、大学ローンの利用者が増加している。
3. ここまでの負担増を年金減、消費税Upであれ実行できるのか?
出来ないとなると財政赤字が増額することとなる。その赤字は
人口構成が変わり若年層が増えるまで継続する(つまり解消しない)
4. そもそも貯金をして備えようとしても、経済が弱体化した場合
インフレなどで価値が下がるのではないか?
以上
参照資料
公的年金のこと - 日興アセットケースを検討するマネジメント
https://www.nikkoam.com/files/fund-academy/koyomi/pdf/co_1906.pdf
社会保障について - 財務省
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia301009/01.pdf
2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について - 経済産業省
www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf
統計からみた我が国の高齢者 - 総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics113-2.pdf
賃上げが年金を救う ~うまくいけば年金支給条件の見直しは不要へ~
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2018/kuma180829ET.pdf
高齢者比率
https://biz-journal.jp/2018/12/post_25900_2.html
医療費内訳
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/16/dl/data.pdf
高齢者人口推移
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_1_1_02.html